スキュアモーフィズム?
アイコンやコンポーネントに立体感を与えるデザイン手法のことを指す. ジョブズが生きていたころのiOSにおいて採用されていた.
ボタンとかが持つ本来のアフォーダンスを平面のデザインに生かすことにより, ユーザがどう使えばいいか(How to Use)を簡単に表現できる.
そのため,コンポーネントが使われやすさ(アプローチャビリティ)を向上できること, およびユーザがボタンを押したときの物理的 直感に即した視覚的フィードバック得られることが期待できる.
スキュアモーフィズムは衰退した
しかし,時代はスキュアモーフィズムではなくフラットデザインが主流となっていく.これはなぜか.
1つ挙げるとしたらコンポーネントの情報量が多くなりがちであることだろう.
本来ならばクリックできればいいだけのボタンに影をつけたりグラデーションを付けたりと処理が多くなる. 画面内のあらゆるところにスキュアモーフィズムなコンポーネントができてしまった場合, 画面のレンダリングコストが大きくなってしまう. そのため,数百ms描画が遅れ,結果としてユーザ体験を下げてしまう.
仮にレンダリングコストを減らすようにスキュアモーフィズムなデザインができたとしても, ユーザは画面全体の凹凸を理解しようと脳が処理を働かせ続けるため,余計な負荷となる.
一方,フラットデザインは画面全体の情報量を抑え,穏やかなデザインを提供した. ウェブページに掲載されている情報を入手する上で,スキュアモーフィズムが提供する情報は余計な情報となるのだろう. 情報が溢れかえる昨今において,人々が穏やかなデザインを求めたのは言うまでもない.
ニューモーフィズム
しかしながら,スキュアモーフィズムが提供するアフォーダンスは人々にとって慣れ親しいアフォーダンスであり, 利用しない手はない.したがってスキュアモーフィズムとフラットデザ インが混ざったような概念が登場するのもまた当然の帰結だろう.
その概念こそがニューモーフィズムである.
スキュアモーフィズムでは,複雑怪奇な凹凸形状を平面デザインに投影した結果として, 膨大な数の色と形状が画面を支配してしまった.
一方,ニューモーフィズムでは複雑怪奇な凹凸形状を直接投影するのではなく, 必要なアフォーダンス要素を切り取ってデザインに反映する.
これによりニューモーフィズムでは,スキュアモーフィズムの提供してくれていたアフォーダンスを残しつつ, フラットデザインのように穏やかなデザインを実現している.
新しく発表されたMacOS 11においても,妙な立体感をもつアイコンが採用された. 全体においても,影を持つウィンドウのように既存の立体デザインを残しつつ, フラットデザイン調で仕上げている. まさに,ニューモーフィズムの波を起こさんとするようなデザインだ.
全てニューモフィズムとなるのか
ここで疑問となるのが,またスキュアモーフィズムが衰退したときのようにフラットデザインは廃れていくのかということである.
しかし,フラットデザインが衰退するとは考えづらい(少なくとも今後10年くらいは). 根拠として,フラットデザインの性質が情報過多な現代とマッチしていることが挙げられる.
フラットデザインは我々に視覚的な落ち着きをもたらした. 再び情報を増やすようなデザインへ戻るのは決心がいることだ.
今後のデザイン事情の動きに注目していきたい.